勘違いしがちな…早出【時間外労働の上限規制/建設業へ2024年4月適用】

■時間外労働の上限規制の建設業への適用

国土交通省は、働き方改革推進のため、改正建設業法による「著しく短い工期」での契約禁止規定の2020年10月施行を踏まえた「工期設定実態調査」を実施しますが、それとともに、時間外労働の上限規制の建設業への適用開始を見据えた「技術者・技能者の労働実態の調査」も同じく20年度に行う予定です。

この上限規制は、働き方改革関連法により、2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)の改正労働基準法の施行に基づくもので、2024年4からは、これまで適用除外とされていた建設業等に対しても時間外労働の上限規制が適用されます。

「月40時間、年360時間」を原則(臨時的な特別な事情がある場合の別枠あり)とする上限は、従来の大臣告示による行政指導の基準(目安)とは異なり、法律による規制となるため、違反した場合には、罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。

■早出は残業になる?

上記の労働実態の調査においては、勤務実態を明らかにする中で、当然、上限規制が適用となる時間外労働すなわち残業の実態について問われることと思いますが…、意外と勘違いをされているのが、早朝出社などのいわゆる「早出」についてです。

“残業”という言葉は、就業時間後に残って仕事をするイメージが強いので、就業時間前は残業にあたらないと捉えがちですが、前後にかかわらず時間外であることに違いはなく、仕事をすれば早出も残業となります

例えば、自ら早く出社してくる社員は、昨日やり残した仕事を片付けたいから、会議等の準備をしたいから、終業時刻になったらすぐにあがりたいから、早朝のほうが電車がすいているから、早く来るのが趣味だから等々、様々な理由があると思いますが、出社後に始業時刻まで働いたということになると残業代が発生します。上司の指示での早出であれば勿論、そうではない場合でも、社員に支払う賃金に早出の分を残業代として計上していなければその分は不払い賃金となります。また、タイムカードを始業時刻に合わせて打刻しても、実際にその時刻まで仕事をしていた場合に今度はサービス残業の問題が生じます。

■民法改正で残業代の請求権が2年から5年へ

2020年4月に改正民法が施行されます。そこでは、賃金を含む一般債権の消滅時効が原則5年に統一されるため、労働基準法115条で2年間と規定されている賃金等の請求権も民法の5年に統一される検討がなされています

そうすると、万一、不払い賃金として残業代を請求された場合に、遡及して5年分を支払わなければならないケースがでてくるということです。

■今後どうする

厚生労働省が2017年(平成29年)1月に策定したガイドラインでは、労働時間の適正な把握のために使用者の講ずべき措置として、始業・終業時刻に関して、自ら現認するか又は客観的な記録(タイムカード、ICカード、PCのログ等)に基づいて確認し、やむを得ず自己申告の場合でも客観的記録と乖離が生じているときは実態調査を実施して把握することを求めており、その他、時間管理に関して極めて厳しくなっています

また、管理監督者として労働時間の対象外となってはいても、自ら労働時間を決められるような本当の管理職がどれだけいるかというと、…多くの会社では、オーナー社長くらいではないでしょうか。残業代の有無は別としても、本来の趣旨から、これらのひとたちも時間無制限ではなくきちんと時間管理はするべきかと…。

ひと昔前まではヤル気の象徴とみられていた早朝出社も、勤務状況が把握し難いうえ、賃金不払いやサービス残業の原因となりますので、今や、繰り返すと処分の対象となる会社もあるほどです。理由のある正式な早出残業にはきちんと残業代を支払う一方で、不必要な早出をしないよう注意喚起や指導の周知徹底が大事ですが、残業を減らし、そもそもグレーな状態が生じないような労働環境、快適な職場環境の形成が理想ですね。(労働安全衛生法の目的の受け売りのようになってしまいました…。)

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